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イタリアいなかまち暮らし

イタリアいなかまち暮らし

商店賃貸

商店賃貸

イタリアではすでに飲食店が入っている賃貸物件をそのまま引き継ぐ場合、「事業(attività)を買う」という言い方をして、設備のみならず、店名や、すでに着いている顧客もひっくるめた値段を前の借主に対して払う。これはもともと私たちには必要のない方法である。設備はすべて相方が持っている*のだ。
しかしイタリアでは、どの町にも飲食店規制というものがあり、決められた地域内にレストランは何件しか建ててはいけないと管理されているのだ。違反して新しく建てようとしても許可が下りない。飲食店だけでなく全ての商売においてこうした規制がある。全体的に都市計画が厳しくコントロールされている国である。

この規制枠いっぱいに飲食店が立っている地域だと、前記した「事業を買う」方法でしかレストランを始められない。調べたところカンポバッソ内はどこも規制枠いっぱいであった。

しかし、例外があって、centro storico(旧市街。下町のようなもの。石畳の狭い道に古い建物がひしめき合って頭上に洗濯物がはためいているような地域)は適用外で、何件飲食店を建てても良いことになっている。この適用外地域がいったい厳密に言ってどこからどこまでなのか、非常にわかりにくかったが相方が商業課やら都市計画課やらたらいまわしにされてやっと見つけてきた。

そこでその地域に入っていて貸しに出されていて現在空の状態の店がひとつだけあった。しかもガス、水道だけ通っていて設備は何もないので私たちには好条件だった。そこが今われわれが営業しているこの店である。

しかし相方の意固地なほどケチな性格のために工事会社に頼らず私たちだけで改築したのだが、開店にいたるまで最終的に一年という長い改装工事期間を経なければならなかったのだ。

*相方が設備を持っているとは

先に書いたように彼が以前経営していた店は6年の契約が終了したときに大家が更新してくれなかったために閉業した。
相方はそうなると誰にも「事業を売る」ことができないので、レストランにあるもの(全部自分のだったが)全部実家に持ってかえって父親のガレージに閉まったのだ。
ガス台、調理台、調理器具は言うまでもなく、換気扇(ガス台の上の空気を吸う部分と、ダクトというんですか?空気を通す部分と、モーターとファンの全て)食器、いすとテーブル、洗面台まで、まさに一切合財である(さすがに便器までは持ってこなかった)。

これは嫌がらせのように契約を終了された大家に対しての恨みと憎しみのなせるわざ。もともと倉庫のようなものだったその場所にレストラン設備を建てるとき自分で金を払ったものは、ガス管一本すら残したくないという執念である。便器を持ってきてなくてほんとに良かったと思うほど。

しかもそれが全部、車一台用の実家のガレージに、車が入るぎりぎりのスペースだけ残して、ぎっちりと詰まっていたのだ。もう、もちろん3方の壁は全然見えなくて、天井までぎっちりである。結構天井が高いのが幸いしてか全て何とか収まっていた。しかしきっちりときれいに置かれているのではなくて、ぐちゃぐちゃとつまれていたのだ。

このガレージにうまく車を入れるのはどんな達人でも至難の業で、ガレージの持ち主であり利用者である父上から相方は「毎回出たり入ったりするたびに擦る」「・・才になっても親に迷惑をかけて」と顔をあわせるごとに叱られていた。私もこのガレージを見るたびあまりの煩雑さに気分が悪くなるほどで「お父さんの言うことは実にもっともだ」とプレッシャーをかけていた。(自分の部屋は散らかってても平気だが)まあこれは他に倉庫を借りるお金を節約するというケチのなせる業である。


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